9/30 田園にくちづけ [舞台]
ブロドッキングヘッドロックvol.29「田園にくちづけ」STORY
『20は歳の離れた従兄弟がお見合いをした。従兄弟にはもう十数年、彼女が
なかった。僕の田舎の寂れた町で、学校の先生をしながら実家の田んぼを
守る、真面目で不器用な人なんだ。
だけど僕には不満があった。相手が若く、可愛く、優しい人だったんだ。料理が
うんと上手いらしい。そう。なにも従兄弟じゃなくても。そう思ったんだ。
父さんも叔父さんも(従兄弟の父さんだ)、デンもタツくんもハラショーさんも、
みんながそう思ったと思う。そういう顔だったから。町中の男が優しいあの人を
見ていた。あの人は、田んぼのあぜ道を歩きながらトンボを目で追い、
「幸せだなあ…」なんて呟く、そんな人なんだ。
それからひと月。夏の終わりのある日、従兄弟がにやけながら言ったんだ。
「コウくんはさ、キスの味、知ってる?」
なんだとバカ野郎!自分だけ知ったような!18年もしてなかったくせに!
するわキスくらい!ちょうどしたわこの間!最近東京から越してきたグルメ
漫画家んとこの子としたわ!女子高生だわ!しかも向こうからだわ!
だけど僕は答えられなかったんだ。した後その子に、「不味いねキミ」と
言われたから。それからグルメ漫画の先生にもされて、アシスタントの男性
にも何度かされて、される度に、「ほんとだ不味いね」と言われたから。
グルメな人はわからない。美味いも不味いもわからない。なんなんだ。
僕が不味いというのなら、美味い誰かは誰なんだ!…遠くで僕の母さんが
ごはんごはんと騒いでる。母さんよ。悪いが今はそれどころじゃないんだ!』
稲穂波打つ田舎町。唇を奪い続ける異能の一家と青年と、父母と男達と優しい女。
彼らが優しく激しく交わし合う、忘れじの、味の記憶の物語。
なかった。僕の田舎の寂れた町で、学校の先生をしながら実家の田んぼを
守る、真面目で不器用な人なんだ。
だけど僕には不満があった。相手が若く、可愛く、優しい人だったんだ。料理が
うんと上手いらしい。そう。なにも従兄弟じゃなくても。そう思ったんだ。
父さんも叔父さんも(従兄弟の父さんだ)、デンもタツくんもハラショーさんも、
みんながそう思ったと思う。そういう顔だったから。町中の男が優しいあの人を
見ていた。あの人は、田んぼのあぜ道を歩きながらトンボを目で追い、
「幸せだなあ…」なんて呟く、そんな人なんだ。
それからひと月。夏の終わりのある日、従兄弟がにやけながら言ったんだ。
「コウくんはさ、キスの味、知ってる?」
なんだとバカ野郎!自分だけ知ったような!18年もしてなかったくせに!
するわキスくらい!ちょうどしたわこの間!最近東京から越してきたグルメ
漫画家んとこの子としたわ!女子高生だわ!しかも向こうからだわ!
だけど僕は答えられなかったんだ。した後その子に、「不味いねキミ」と
言われたから。それからグルメ漫画の先生にもされて、アシスタントの男性
にも何度かされて、される度に、「ほんとだ不味いね」と言われたから。
グルメな人はわからない。美味いも不味いもわからない。なんなんだ。
僕が不味いというのなら、美味い誰かは誰なんだ!…遠くで僕の母さんが
ごはんごはんと騒いでる。母さんよ。悪いが今はそれどころじゃないんだ!』
稲穂波打つ田舎町。唇を奪い続ける異能の一家と青年と、父母と男達と優しい女。
彼らが優しく激しく交わし合う、忘れじの、味の記憶の物語。
感想 まず!こんな面白いアイデアはナイスです。くちづけをして、相手の食べた記憶をとることができる。ということは、人間ではありません。最初にいきなり男同士でキスをしたのを見た時え?何?だんだんわかってきて不思議な舞台でした。
6月に今年初舞台の劇場下北沢のザ・スズナリでした。
いろいろな舞台を観て脳を活性化効果ありです。